昨秋のベトナム全国の語学試験見合わせの問題で、多くの学生や保護者が影響を受けました。
かつて語学試験と言えば、学生は留学や奨学金選抜に自分の語学能力を証明できる書類が必要だから受験するものでしたが、現在使用範囲がかなり拡大されています。
では、ベトナム人学生が各種語学検定試験を受ける理由について解説します。
1.ベトナム人の外国語学習
ベトナム市場調査サービスを実施するQ&Meによる2021年6月に実施したベトナム人の外国語学習習慣調査結果の一部を紹介します。
最も勉強される言語:英語 86%、日本語 16%、中国語 15%
外国語学習平均時間:週1~3時間 37%、週3~6時間 20%、週10時間以上 10%
将来に勉強したい言語:日本語 37%、韓国語 36%、中国語 25%
上記の結果を見ると、英語学習がベトナム人にとって不可欠なスキルとなっているとわかっています。
英語の次に最も勉強される言語、また最も勉強したい言語が日本語です。
ベトナムへ進出した日系企業数増加と共に日本語できる現地の人材の需要が高まり、日本留学や日本で就職のニーズが増大し、更に2016年にベトナム政府は日本語科目を取り入れることを決定し、2021年2月時点に日本語教育を実施する全国の小学校~高校の数が119校となっていますから、ベトナム人の日本語学習者の数が近い将来にまだ増えていくと予測されます。
2.ベトナムの外国語能力認定証明書の種類
就職や留学の語学能力判定基準は場所によって異なりますが、こちらではベトナム教育訓練省により認定される外国語能力認定証明書について紹介します。
教育訓練省が認定したものを大きく分けますと、3つの種類があります。
a.教育訓練省が規定する資格
ベトナム教育訓練省は全ての外国語の運用能力を6段階で評価します。
教育訓練省の6段階評価は欧州評議会のCEFR基準に基づいて作られたものです。
1993年から2020年まで外国語の試験がA・B・Cの3レベルで判定されましたが、現在6段階の評価基準を採用され、教育訓練省が資格発行可能と認定された機関のみで受験すると、大学受験などのためにその結果を利用することができます。
結果証明書の有効期限は発行日から2年間となります。
b. ベトナムの大学の卒業証書
教育訓練省が認定した大学で外国語学部を卒業した学生が卒業証書を利用し大学院に進学したり、また公務員試験の受験や公務員の人事評価などで、その外国語試験が免除されることがあります。
c. 教育訓練省が認定した民間外国語検定試験の合格通知書・結果通知書
教育訓練省が認定した外部検定試験とは、世界共通の語学試験を示すものです。
代表的な試験といえば、英語はTOEFL iBT, IELTS;日本語はJLPT;中国語はHSK、HSKK;韓国語はTOPIK;フランス語はDELFです。
3.ベトナム人学生にとって語学試験が人気な理由
語学試験はほとんど海外の機関により運営されています。そのため、ベトナム教育訓練省が規定する資格の受験料より非常に高いです。更に、目標点数達成までの受験勉強のための費用も非常に高いです。それでも、受験生の数が年々増加しています。その理由は以下のように考えられます。
a. 海外留学のニーズが高い
ベトナム教育訓練省・国際交流局の2019年調査データ(現在最新調査)により、2019年末までに海外留学中のベトナム人学生数が約19万であり、2018年より約2万人増えました。そして、当年の学生数が最も多い留学先が日本でした。
留学するために最も重要なスキルは語学力です。特にコミュニケーション能力が非常に重視されます。
海外の大学へ入学する際はほとんど外国語検定試験の証明書の条件があります。
更に、学校によって、外国語検定試験の証明書以外、外国人向けの大学受験のための試験結果を求めることもあります。代表的なものはアメリカの大学適性試験(SAT)、日本の日本留学試験(EJU)です。
将来に海外のいい大学を目指しながら勉強するベトナム人が、国内の高等学校卒業試験向けの勉強と共に、留学のための試験の勉強も同時に行わなければなりません。
b. ベトナム国内の卒業試験や大学受験で使用
ベトナム教育新聞の2023年5月26日に掲載された記事により、2023年、ハノイ市内では15,991人の学生が高校卒業試験の英語科目の受験免除申請のために英語民間試験の結果通知書を提出したことがわかりました。2021年の約10,000人と2022年の約13,000人と比較すると、英語民間試験の受験生が徐々に増加しています。
また、近年ベトナムの大学入学試験の種類が拡大しています。その中、語学検定成績評価は選抜方法として一部の大学が使用しています。日本でも、大学入学共通テストへの英語民間試験の導入を断念されましたが、早稲田大学・上智大学など多くの大学が同様に入試選抜で英語民間試験の結果を利用しています。
中学校・高校では第一外国語は英語ではなく、日本語や中国語などを選択する際、卒業試験や大学受験の際、それらの外国語の民間試験の結果通知書を提出すれば、英語と同様に受験免除の対象になります。
それ以外、将来の就職のため、語学能力を測るためなどの目的もあるはずですが、進学希望高校生たちにとっては費用、時間、努力をたくさんかけて語学試験の受験勉強を頑張ることが上記の2つの理由が一番大きいに違いません。
ベトナムでは第一外国語が英語であり、英語圏の大学へ進学したい学生数が多い理由で、現在英語検定試験(IELTSなど)や英語圏の大学入学試験(SATなど)の受験生数が段々増加しています。
しかし、ベトナムでは、小学校や中学校から日本語を勉強する学生の数が増えつつ、また渡日前入学許可校数が拡大していますから、将来日本語検定試験各種や日本留学試験の受験生数が大きく変化することを予測できるでしょう。